「これからはリーダーシップが大切になってくる」「もっとリーダーシップを発揮して」など、職場において言われた経験はないでしょうか。
就職・転職の面接などでも「リーダーシップを発揮した経験は?」という質問を受けることも多くあります。
しかし、重要だとされているこの「リーダーシップ」とはいったい何なのか、しっかりと理解している方は少ないのではないでしょうか。
ある人は「グイグイと強引に引っ張っていくこと」といい、また別の方に訊くと「メンバーを成長させること」と、異なるこたえが返ってきます。
この記事では、いったいリーダーシップとは何なのか整理するとともに、これからの時代において求められるリーダーシップのスタイルについて解説します。
そしてどのような行動を取ればリーダーシップを身に着け、組織において最大限のパフォーマンスを発揮することができるのかお伝えします。
リーダーシップの定義と要素
まずは「リーダーシップ」とは何なのか明らかにしていきたいと思います。
ここではリーダーシップの特徴、リーダーシップを構成する6要素について解説します。
これを読めば、リーダーシップについての理解は深まり、リーダーシップの考え方についてクリアに整理されるでしょう。
リーダーシップは人との関係において発揮される
まず知っておいていただきたいのは、リーダーシップとは役職・地位によって発揮されるものではないということです。
「あるプロジェクトのリーダーである」という事実から、リーダーシップを取っているということにはなりません。
リーダーシップとは「リーダーの言動とフォロワーの認識の間に存在する」ものです。つまり、人との関係(性)のなかで、リーダーシップが生じるのです。
「リーダーシップを持つ人」ととは、望ましい関係を通して、機能するチームを作り上げる人のことだ、ともいえるでしょう。
注意したいのは、関係性というのはその時々に応じて変わるものなので、最適なリーダーシップの形は文脈によって変わりうるということです。
ですから「これがリーダーシップだ」と一口に言い表せることはできません。リーダーシップを構成する要素は複数あるのです。
では、リーダーシップを構成する要素とはいったい何なのかを、次に解説していきましょう。
リーダーシップの6要素
世界最大のリーダーシップ開発のコンサルティング会社であるヘイグループは「有能なリーダー=結果を残すリーダー」の行動特性を整理し、リーダーシップを次の6つの要素に分類しています。
- 指示命令
- ビジョン
- 関係重視
- 民主
- 率先垂範
- 育成
それぞれ、どういうことを意味するのか想像はつくのではないかと思いますが、念のため簡単に補足しておきます。
リーダーシップの要素1:「指示命令」
明確な指示を提示し、指示通りの動きを求めることを指します。
いつまでに、何をやるのか細かく指示を出し、随時進捗報告を求め、プロジェクトを細かく管理するスタイルといえます。
リーダーシップの要素2:「ビジョン」
「なぜ、いまこの仕事が必要なのか」を背景、関連情報を含めて伝え、理解させるスタイルです。
目的もあわせて伝えることになるので、メンバーは長期的視野を持ち、モチベーションが高くなる傾向があります。
リーダーシップの要素3:「 関係重視」
まずは人を見ること、人との関係性を築き、調和を形成することを重要視します。調和を作ったあとに仕事に向かうタイプのリーダーシップとなります。
健康や家族、将来の夢などプライベートな側面を含め、メンバーの状況を気にかけ、情緒的なつながりを求める傾向があります。
リーダーシップの要素4:「 民主」
トップダウンとまったく逆のスタイルが「民主」だといえます。意思決定の際には、メンバーの全員を参画させ、アイデア、情報を吸い上げることを大切にするスタイルといえます。
決定の際にメンバーが参加しているので、決定事項に対してのチームメンバーの納得感が高くなるというメリットもあります。
リーダーシップの要素5:「率先垂範」
「率先模範」とは、自分が先頭に立ち、模範の姿をメンバーに示すリーダーシップです。
仕事の仕方は行動で示す、いわば「職人タイプ」のスタイルといえます。
リーダーシップの要素6:「育成」
時間がかかっても、メンバーの成長を優先し、相手にあわせた指導・フィードバックを行うことを重視するスタイルです。
長期的な目線に立ち、チームの能力向上の最大化を目指すリーダーシップとなります。
以上が、リーダーシップを構成する6要素となります。
リーダーシップの「どの要素」を重視するかを判断する
リーダーシップの構成する6要素を読み進めているうちに「この要素とこの要素は矛盾しているのでは?」と思われた方もいらっしゃるかと思います。そう思われた方はとても鋭い方ですね。
一つ一つ見ていけば、リーダーシップを構成する要素として納得できるかもしれません。
ですが、たとえば「いつまでにこれをやれ!」と指示する「指示命令型」リーダーシップと、背景・目的をメンバーに伝える「ビジョン型」リーダーシップはなかなか両立しません。
重要なのは、自分たちがいま置かれている環境において、どのような種類のリーダーシップが有効に機能するのかを判断し、リーダーシップの各要素の最適なポートフォリオ(配分)を組むことです。
たとえば「あと1ヵ月で売上を伸ばさなかったら会社が危機的な状況に陥る」といった環境では、ビジョンを示したり、部下の育成に時間をかけている場合ではありません。
このような危機的状況で、短期的な成果が求められる場合は、自分が動けるところは積極的に動き、メンバーにはトップダウン方式で指示を出すかたちのリーダーシップが有効になるでしょう。
逆に、売上予算の達成に余裕があり、数年後の売上最大化を狙うのであれば、ビジョン型、関係重視型、育成型のリーダーシップを取ることが有効です。
「自分に合ったリーダーシップの発揮の仕方」も重要ですが、状況に応じてリーダーシップの発揮方法を変えていけるのが、リーダーに必要な資質です。
次に、これから求められるリーダーシップのスタイルについて解説していきます。
これから求められるリーダーシップの3つのスタイル
それでは、これから特に求められるリーダーシップの3スタイルについて説明します。組織が活性化するためには、どれも欠かせない資質となってくるでしょう。
- サーバント・リーダーシップ
- 傾聴するリーダーシップ
- ヴィジョナリー・リーダーシップ
サーバント・リーダーシップ
「サーバント(servant)」は「召使い、使用人」という意味です。いわば、メンバー、部下に仕えるリーダーシップとなります。
リーダーというと、強い権力を持ち、命令を行い、指示を出す者というイメージがあるかもしれませんが、このような「支配型リーダーシップ」の時代は終わりを迎えることになるでしょう。
環境変化が激しい時代において、従来のスキルや知識はあっという間に陳腐化します。新しい、多様な人材を入れ、必要に応じて適宜バックアップするという姿勢がこれからのリーダーには求められます。
そもそも、支配型リーダーシップを取るリーダーを取るチームの場合、チームのパフォーマンス上限はリーダーによって決まってしまいます。これは組織にとっては致命的な事態です。
チームパフォーマンスを最大化するためには、メンバー・部下の能力を支援し、リーダーの限界がチームの限界にならないような仕組みづくりが必要です。
傾聴するリーダーシップ
イノベーティブなアイデアを出す人物は、組織に加わって日が浅いこと、また若者であることが圧倒的に多くなります。
いつの間にか、既存メンバーはこれまでの慣習、方法を「当たり前」だと思い込み、新しい発想を考えることが少なくなっている場合も少なくありません。
ただでさえ、新規メンバーや若者は発言権がないなか、そのようなメンバーを「まだ経験が浅い未熟者」と思っていては、ますます委縮させてしまいパフォーマンスを落としします。
新しい人こそ革新的なアイデアを持っているのではないかと情報を積極的に取りにいき、偏見を持たずに真摯に彼らの声に耳を傾けることがこれからのリーダーには求められるでしょう。
ヴィジョナリー・リーダーシップ
最後に紹介するのは、ヴィジョンを提示するというリーダーシップです。
筆者はこの能力が、今後最も重要なリーダーシップだと考えています。
本来、組織がどのように変わるのか、外部環境がどのように変化するのか、未来のことは不透明なものです。
そんな時代だからこそ、組織と組織のメンバーがどのような姿を目指すか、どのような方向に向かっていくのか、そのステップと理想像を提示することで、メンバーのモチベーションを高め、一体感を持って邁進できるチームを作ることが、求められるリーダーの資質となるのではないでしょうか。
これから必要になるリーダーシップとは、独断で物事を判断することではなく、人を巻き込みながら、組織をまとめあげていく力なのです。
リーダーシップの要素、そしてこれから求められるリーダーシップについて詳しく見てきましたが、そのようなリーダーシップをどのようにして身に着けていくか気になるのではないでしょうか。
そこで、筆者おすすめのリーダーシップを発揮するための方法について紹介したいと思います。
リーダーシップの身に着け方
ここまで読んだ方なら、リーダーシップとは必ずしも先天的(才能)なものではない、ということは想像できるのではないでしょうか。
リーダーシップは訓練によって後天的に身に着けることができ、だからこそ貴重なものなのです。
「話が上手い」「声が大きく、強引な性格」といったものはリーダーシップが発揮されるごく部分的な側面でしかありません。筆者はどちらかというと口下手なほうですし、人見知りも強いほうですが「リーダーシップがある」といわれます。
リーダーシップを発揮するための行動習慣を紹介しますので、ぜひ試してください。
明確なヴィジョンを持ち、ポジティブな雰囲気を出す
何より大切なのは、チームの理想像、将来どのような姿になっていたいかを明確化することです。
ここで気を付けたいのは「いかに生き生きとした、ワクワクする姿を描くか」ということです。
KGIやKPIであれば「来期に売上1億円、営利2000万円を達成する」といった定量的な目標になることが多いでしょうが、ヴィジョンを描く際には定性的でもいいので、よりリアルで具体的な「そこに到達できたら最高だ!」とメンバー全員が納得できるものにしましょう。
多少、夢に近いものであってもかまいません。
「クライアントから感謝の言葉を嫌というほど浴びている」
「日本中の会社から、一目置かれるような会社にする」
など、「実現したら、すばらしい」と思えるようなヴィジョンが好ましいでしょう。
ただ、このヴィジョンは独りよがりのものになってはいけません。メンバーの意見も採り入れつつ、自分だけでなく、みんなのモチベーションアップにつながるヴィジョンになっているか確認することが重要です。
そして決まったヴィジョンは機会があるごとに口に出し、共有することを心がけましょう。
きっとチームの雰囲気は良くなり、パフォーマンス向上につながるでしょう。
「リーダーシップのある人」の特徴を書き出す
リーダーシップ向上のためには、あなたの身近にいる「リーダーシップがあると思える人」の特徴、行動を書き出すのもおすすめです(あるいはリーダーシップを感じた行動を書くにも良いでしょう)。
- 部下の声を真摯に聴いている
- 部下の改善点、問題行動を期待を込めながら、冷静にフィードバックしている
- 挨拶の声が明るく、大きい
- 自分なりの価値観、軸を持っている
- 情に厚い
- 部下には裁量を与えながら、責任範囲を明確に伝える
など、書き出すことで見えてくるものがきっとあるはずです。
ただ書き出しただけで終わりにしては意味がありません。
それらの項目について、自己評価を行い、「自分ができていない部分」を洗い出し、「今週はこの部分を改善しよう」と決め、具体的な行動に落とし込むことが重要です。
すべての項目を一気に改善する必要はありません。着実に「良い行動様式」を生み、習慣化することで、継続的に自分の能力を高めることができます。
定期的な振り返りを行う
せっかくリーダーシップを身に着けるために行動しているのですから、定期的な振り返りを行い「できるようになったこと」「まだできていないこと」を定期的に振り返らないと、もったいないです。
「リーダーシップを十分に発揮している自分の理想像」と「現実の自分」の差分はどこにあるのか、どのようにしたらその差分を埋めることができるのか考え、次のアクションにつなげることで、成長を加速させることができます。
1週間~2週間に一度は自分の行動を振り返り、自分の成長を確認するとともに課題点をクリアにしていくことをおすすめします。
まとめ
この記事では、リーダーシップとはいったい何なのかを明らかにしてきました。
記事でも紹介した通り、リーダーシップは6つの要素から構成されているため、一言で「リーダーシップというものは、こういうものだ」ということはできません。
しかしチームや組織を活性化させるには、リーダーシップを発揮する人物が絶対に必要です。リーダーシップは簡単に身に着くものではありませんが、だからといってリーダーシップを発揮するのに特別な才能が必要になるわけではありません。
より組織を活性化させるために自分に何ができるのか考え、PDCAを回していくことで、気づいたときにはあなたは周囲から「リーダーシップがある」と認められる存在になっているはずです。
この記事を参考に、あなたなりのリーダーシップを発揮し、あなたが所属する組織に貢献できることを祈っています。
コメント