2016年12月に可決された「カジノ法案」(正式には「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」、「IR推進法」とも略されます)。これによって日本のカジノ施設の設置を推進することに、はじめて法的な根拠が与えられることになりました。
しかし、具体的にこの法律の内容がどういうもので、どのような過程を経て、日本にカジノができるようになるのか知らない人もいるかと思います。
IR推進法の内容を簡単にまとめると、次のようになります。
- 目的は「特定複合観光施設」をつくることで、観光・地域経済を振興させ、財政の改善を促すこと
- 「特定複合観光施設」とは、カジノ施設以外にも会議場施設、レクリエーション施設、展示施設、宿泊施設などが一体となったもの
- カジノ設置・運営に関する必要な規制・措置を政府は作らなければならない
重要なポイントはこれだけです。
この記事では、IR推進法の内容を法律に即して説明するとともに、今後のカジノ設置までの動向を予想します。
すでに大阪、長崎、北海道、和歌山が区域整備計画を国に申請する予定になっています。
この記事では、IR実施法を含め、いわゆる「カジノ法案」の重要ポイントを解説していきます。
IR推進法とは「日本にカジノをつくる準備」のための法律
誤解されがちですが、IR推進法はカジノを合法化したものではありません。
なぜかというと、IR推進法の内容を見れば分かるように、カジノの具体的な制度内容を示したものではないからです。カジノ解禁のための制度、運営方法が定められているわけではありません。
IR推進法は、カジノを含めた特定複合観光施設をつくるにあたって、どのような目的があるのか、その目的のために、国はどんな手順を踏まなくてはいけないのかを示したものにすぎません。
具体的な制度設計については、新たな法律(IR実施法)によって規定する必要があり、その法律の成立・施行によって、はじめてカジノ解禁ができるということになります。
第五条 政府は、次章の規定に基づき、特定複合観光施設区域の整備の推進を行うものとし、このために必要な措置を講ずるものとする。この場合において、必要となる法制上の措置については、この法律の施行後一年以内を目途として講じなければならない。
IR推進法の内容をざっくりと解説
それでは、IR推進法では何が定められているのか、見ていきたいと思います。
日本にIRリゾート施設をつくることの目的
カジノが付設されるIRリゾート施設をつくる目的は「観光・地域経済の振興」と「財政の改善」と定められています。
(目的)
第一条 この法律は、特定複合観光施設区域の整備の推進が、観光及び地域経済の振興に寄与するとともに、財政の改善に資するものであることに鑑み、特定複合観光施設区域の整備の推進に関する基本理念及び基本方針その地の基本となる事項を定めるとともに、特定複合観光施設区域整備推進本部を設置することにより、これを総合的かつ集中的に行うことを目的とする
日本は、豊富な文化遺産や四季折々の風景、美味しくて安全な食事、独特のサブカルチャーに加え、治安の良さや整備されたインフラもあり、観光地としてのポテンシャルは高いものの、十分に観光客を惹きつけられていないという現状があります。
原因としては観光地としてのアピール不足や、空港の立地の不便さもあるでしょうが、観光資源が集中していないというのも大きいでしょう。
会議室や宿泊施設、劇場やテーマパークなどを集中的に特定地域に集めることで、地域一帯の経済活動を活性化させることが、IR推進法の目的です。
さらに外国ではカジノが文化として定着していること、また収益源としても高い期待が寄せられていることから、IRリゾート施設にカジノもあわせて設置することが考えられているというわけです。
特定複合観光施設は民間業者が運営する
IRリゾート施設は民間事業者が設置・運営することが定められています。
大規模な開発となるはずですから、それらの知見がある民間事業者が主体となって動かないことには、成功することは考えられません。
ある意味では当然の規定といえるでしょう。
(定義)
第二条 この法律において「特定複合観光施設」とは、カジノ施設(中略)及び会議場施設、レクリエーション施設、展示施設、宿泊施設その他の観光の振興に寄与すると認められる施設が一体となっている施設であって、民間事業者が設置及び運営をするものをいう。
もっともカジノ事業者に対して規制するのは、内閣府に外局として置かれる「カジノ管理委員会」です。
カジノ設立にあたっての必要措置を講じること
IR推進法では、政府がカジノ施設をつくるにあたって必要な措置を取ることが書かれています。
具体的には下記に示されていますが、とりわけ懸念されているのは反社会的組織の排除、ギャンブル依存症対策、治安対策、青少年への影響です。
(カジノ施設の設置及び運営に関する規制)
第十条 政府は、カジノ施設の設置及び運営に関し、カジノ施設における不正行為の防止並びにカジノ施設の設置及び運営に伴う有害な影響の排除を適切に行う観点から、次に掲げる事項について必要な措置を講ずるものとする。
一 カジノ施設において行われるゲームの公正性の確保のために必要な基準に関する事項
二 カジノ施設において用いられるチップその他の金銭の代替物の適正な利用に関する事項
三 カジノ施設関係者及びカジノ施設の入場者から暴力団員その他カジノ施設に対する関与が不適当な者を排除するために必要な規制に関する事項
四 犯罪の発生の予防及び通報のためのカジノ施設の設置及び運営をする者による監視及び防犯に係る設備、組織その他の体制の整備に関する事項
五 風俗環境の保持等のために必要な規制に関する事項
六 広告及び宣伝の規制に関する事項
七 青少年の保護のために必要な知識の普及その他の青少年の健全育成のために必要な措置に関する事項
八 カジノ施設の入場者がカジノ施設を利用したことに伴いギャンブル依存症等の悪影響を受けることを防止するために必要な措置に関する事項
ここまで「カジノ法案」と呼ばれるIR推進法について解説してきました。大事なポイントにはすべて触れましたので、これだけ押さえておけば「IR推進法の内容について知っている」と胸を張っていえます。
この法律は、あくまでもIRリゾート施設をつくるための準備となる「プログラム法」であり、当然ながら候補地の名前も出ていません。
最後に、今後IRリゾート型施設ができるまでの流れだけ、簡単に触れておきましょう。
特定複合観光施設・カジノができるまでの道のり
IRリゾート施設ができるまでの流れは、以下のようになると予想されます。
- IR推進法によって定められた必要措置を検討・設置する
- IR実施法の整備と可決
- 候補地の選定
- 民間資本による開発
カジノ実現までの道のりについて詳しく知りたい方は、「カジノ法案成立の目的は観光立国にあり!IR実現までのロードマップ」を見てください。
また、カジノができることで、どのような影響があるか、パチンコなど他のギャンブルにどう影響を及ぼすかについて関心がある方は、「カジノ法案によるパチンコ業界への影響はなし!パチンコ事業者が企むIRへの進出」をぜひ参考にしてください。
コメント
日本にも早くカジノができるといいですね!