ポジショニング戦略立案の基本!実例で学ぶSTP分析の流れ


この記事ではマーケティングにおける「ポジショニング戦略」に焦点を当てて、解説していく。これまでSTP分析のS(セグメンテーション)、そしてT(ターゲティング)については、別途詳細な解説記事を用意してきた(それぞれ「【実例豊富】セグメンテーションの意味と具体的なやり方を完全解説」、「ターゲティングを完全解説!マーケティング戦略を進める際のポイント」を参照)。

しかし、STP分析を完了させるには、明確なポジショニング戦略が必要になる。ポジショニングを間違えると、これまで行ってきたセグメンテーション、ターゲティングはすべて無駄なものになってしまう。

しかし、安心していただきたい。手順に従って検討を進めていけば、必ず精度の高いポジショニング戦略を立てることができる。

さらにポジショニング戦略を決め、STP分析を完了させることで、自動的に行うべきマーケティングミックスの内容も決まるという利点もある。ぜひ粘り強く、分析を進めていただきたい。

ポジショニング戦略の目的と位置づけ

まずはポジショニング戦略の基本を確認しておこう。そもそも、なぜポジショニングが必要なのか。

以下で、ポジショニングの目的とSTP分析における位置づけを明確にしていく。

ポジショニング戦略の目的

ポジショニングとは、文字通り「ポジションを取ること」、日本語に言い換えると「位置取り/場所を取ること」になる。そしてマーケティングにおいて「ポジショニング」とは、自社製品をどのようなものとしてターゲット消費者に訴求・提供し、認知されることを目指すのか決めることである。

ここでポイントになるのが「独自性」だ。競合との差別化が十分されているか、「代わりがきかない」と認識されるほどのポジションが取れているかが重要だ。他社の製品・サービスでもいいなら、ターゲット消費者が自社の製品やサービスを選択する積極的な理由はない

競合他社が提供する価値とはまったく異なる価値を提供することで、代替不可能なものとして消費者に受け止められるように自社製品を位置づけることが、ポジショニングの目的である(そういう意味でポジショニングは「ブランド」に近いところがある。もっともポジショニングは個別具体的な製品の戦略を指すことが多いという違いは残る)。

次に「ポジショニング」の役割について簡単にみていこう。

STP分析におけるポジショニングの役割

すでに触れたことと重複する部分もあるが、ポジショニング戦略が果たすべき役割について解説していく。

ポジショニングは「STP分析の総仕上げ」

まずはSTP分析の流れを確認する。

  1. セグメンテーション
  2. ターゲティング
  3. ポジショニング

ご存知の方も多いことと思うが、市場を切りわけるのが「セグメンテーション」、そしてターゲットとする顧客を決めるのが「ターゲティング」である。

対象とする顧客が不明確な段階では、潜在顧客が抱えているニーズも深堀りすることができず、実際にどのようなオリジナル性を出せばいいのか戦略があやふやなものに終わる。

つまりポジショニングは、セグメンテーション、ターゲティングを終わらせたあとに行うべき「STP分析の総仕上げ」の役割を担っているといっていい。

ポジショニング戦略は「知覚をめぐる戦い」

アル・ライズとジャック・トラウトが『売れるもマーケ 当たるもマーケ』で喝破したように、マーケティングは「知覚をめぐる戦い」である。どれだけの人間に、どのように認識してもらうのか、それがマーケティングである。


売れるもマーケ 当たるもマーケ―マーケティング22の法則

ポジショニング戦略においては「どれだけの人間に」には強くこだわる必要はないものの(すでにターゲティングしているため)、「どのように認識してもらうか」に細心の注意を払う必要がある。

他社の商品とどれだけ違うのか、どうすれば取り替えがきかないものと認識してもらうかが最重要になる(ポジショニングマップで確認するのが有益だ)。

以上が、ポジショニングが果たすべき役割である。

【補足】ポジショニングが決まれば、マーケティングミックスも決まる

なお、ポジショニングが決まれば(つまりSTP分析が終われば)、その後のマーケティングミックスの方向性もほぼ決まることを付言しておきたい。たとえば有名なマーケティングミックスである「4P」を取り上げてみよう。

  • Product……ポジショニングに相応しい製品をつくる
  • Price……製品戦略による原価が決定する。またターゲット消費者の許容価格により価格が決定する
  • Place……ターゲット消費者にリーチできる最適なチャネルを選択する
  • Promotion……ターゲット消費者が触れることが多い広告媒体を選ぶ。広告の訴求ポイントはポジショニングの軸で決める

もちろん4P施策の実行の際には、より細かな落とし込みが必要になるし、方法論の検討も必要になるかもしれない。ただ、方向性としてはSTP分析でかなりの程度明らかになっているはずだ。

少なくともマーケティングミックス実行の際に、軸がズレていないかチェックするのに有効に機能する。

 

ここまでで、ポジショニング戦略を進めるうえでの必須ポイントを解説してきた。とはいえ、やや抽象的・一般論的な記述に偏りすぎたきらいがある。そこで、どのようにポジショニング戦略を進めるか、具体例とともに解説していこう。

具体例でみるポジショニング戦略の進め方

進め方
ポジショニング戦略を立てるための手順は次の通りだ。

  1. ターゲット消費者のニーズの把握
  2. 自社の強みを活かせる「イメージの空白地帯」を探す
  3. ポジションマップを使い、独自性を持っているか確認する

以降、各ステップについて解説を加えていく。

【ステップ1】ターゲットとなる消費者ニーズの把握

当たり前といえば当たり前だが、まずはターゲットとなるユーザのニーズを把握しなければならない。どれだけ「独自性がある」「誰も手を付けなかったポジション」であろうが、消費者のニーズとかけ離れていれば、見向きもされないで終わる。

そのため、ニーズ把握は必要不可欠だ。さらにターゲットのニーズ分析を通して「価値観の軸」を設定するところまで進めたい。この軸はターゲットが購入する際に重要な要素(単に「KGF:購入決定要因」と呼ばれることも多い)を考慮して設定するようにしよう。

「購入決定要因」といったとき、人がすぐに思いつくのは「(低)価格」であることだが、安易に価格軸を持ち込むのは控えたい。製品に対するイメージ、価値観、嗜好といった主観的・感覚的な部分も購入の決め手になりうる。

たとえばあなたの会社が、新しいカフェのチェーン展開を企画しているとしている。「40代~50代の都市在住の会社員」をターゲットとしておいた場合、価格軸(高いか安いか)が最重要要素になるだろうか。

それよりも「居心地の良さ(回転率が高い/低い)」といった軸のほうが有効なのではないかと、より機能する切り口がないか探す意識を持つことが大切だ。

【ステップ2】自社の強みを活かせる「市場の空白領域」を探す

KGFをもとに軸を設定したら、いよいよ戦略的ポジションの検討に移行する。立ち位置を決めるうえで、次の条件を満たすかチェックしてみよう。

  • 価値軸で圧倒的な優位性を獲得していること
  • 市場の空白領域にいること

「価値軸で圧倒的な優位性を獲得していること」とは、他のどのカフェよりもずば抜けた特定の価値を提供しているという認知を得るということだ。

先ほどのカフェチェーンの例を考えてみよう。「居心地の良さ」を軸を置いた場合、Wifi完備でゆったりとしたソファを設えている「ルノワール」は少なくとも「ドトール」よりも「居心地の良さ」という価値を提供できていると考えられる。

カフェのポジショニング

カフェチェーンの展開を考えているあなたが「居心地の良さ」を軸として勝負したいのであれば、ルノワールよりも圧倒的に居住性の良さで優位に立てるかどうかを慎重に検討しなければならない。その場合は「カフェチェーン店」以外にも競合がいることを注意しておこう。たとえば「居心地の良さ」を求める会社員がニーズが「ゆっくりと外で商談をしたい」場合、ホテルのラウンジなどが競合として現れてくるだろう。

しかし、より好ましいのは「市場にまだ用意されていないような価値」、すなわち「市場における空白の領域」を見出し、独自の地位を占めることである。

ポジショニング戦略におけるいちばんの成功は「競争に勝つ」ことではない。そうではなく「競争しないでもすむような、競合のいない領域を見つけ出して、その立ち位置をいち早く占めること」が理想となる。

【ステップ3】独自の地位を占めることができるか確認する

最終的なステップは、ポジショニングマップにおいて、候補となる立ち位置をマッピングして、実際に独自のポジションを取れるかどうかを確認することだ。

またもやカフェチェーン店の例で考えてみよう。一つの軸は「手軽さ/居心地の良さ」、もう一つの軸として「コーヒーそのものへのこだわり/商品のバラエティ」をおいて、軸をクロスさせる。

「居心地の良い×商品のバラエティ」ではスターバックスがその地位を占めると考えられる。また「手軽さ×商品バラエティ」ではドトールやベローチェなどが考えられる。すでに強い競合がいる場合は、避けるのが得策となる。

最も競合が少ないのは「コーヒーの品質にこだわり抜いた、居心地の良いカフェ」だ。たしかに地元に根ざした家族規模で行っているカフェでは豆にこだわり、その場で焙煎を行い、コーヒーを提供する店もある。しかしそれをチェーン展開している企業はごく稀である。ここにポジションをおくことで、唯一無二の認知を獲得することができ、市場を席巻することができるかもしれない。

もっともこの案を現実に展開するうえでは設備投資、人材の確保、仕入先の確保など、自社のリソースで実行可能なのか慎重に検討さればければならない。だがポジショニング戦略の考え方としては、これまで解説してきた流れが基本である。

カフェチェーンを例にポジショニング戦略の立て方をここまで解説してきた。あとはあなたが抱えている具体的な商品開発案で、どのように軸を立て、マッピングを行うか検討を進めてほしい。

ポジショニングの事例

ポジショニング戦略をたてる際、多くの実例を知っておけばそれだけ抽斗が増え、戦略も立てやすくなるだろう。最後にポジショニング戦略の実例をいくつか補足として紹介して、この記事を締めくくりたい。

マクドナルドとモスバーガー

まずはハンバーガー業界を例に挙げる。

ハンバーガー界の王者であるマクドナルドは「手軽×安さ」が売りであることは論をまたない。

対してモスバーガーは「こだわり(ひと手間かかった)/高級志向」というマクドナルドとはかけ離れた領域で商品戦略を展開することで、マクドナルドと真正面から対決することなく、成長することができた(間違って「価格の安さ」で勝負していたら、価格競争に巻き込まれ消耗戦を強いられることになったはずだ)。

さらにハンバーガーに対して抱かれがちな「ジャンクフード」に対して、モスバーガーは「健康志向」「安全・安心」を謳い、ポジショニングを意識した広告・PR活動を行っている。

ハンバーガー業界のポジショニング戦略

このようにポジションを決めたら、その後のマーケティング活動もそれに合わせた訴求を行い、一貫性をもつことが大切だ。

フィーチャーフォンとiPhone(スマートフォン)

もしかしたらスマートフォン以前に流通していたフィーチャーフォン(物理的なテンキーのある多機能携帯電話、日本での特殊進化から日本の携帯電話は「ガラケー」と呼ばれることもあった)を知らない方もいるかもしれない。

通話、SMS、ワンセグ、おサイフケータイ、着メロなど機能は多く、操作が複雑だったのがフィーチャーフォンの特徴といっていい。

「多機能/UI、操作性の高さ」の軸でいうと、フィーチャーフォンは圧倒的に「多機能」に偏っていた。対してほとんど「スマートフォン」の代名詞となったiPhoneは優れたUI、直感的な操作性、高いユーザビリティーによって独特の地位を確立したうえで、さらに携帯電話市場を全体を席巻した。

デザインについても「装飾華美/シンプル」を軸に見てみよう。フィーチャーフォンのゴテゴテとした多装飾に比べ、iPhoneはミニマリズムかと思われるほどシンプルなデザインとなっている。

スマートフォンのポジショニングマップ

商品デザイン、UI、ソフトウェアキーボード、すべてが「従来の携帯電話とはまったく異なる」新しい経験を約束しているかのように思わせたのである。

ポジショニングの変更事例/資生堂「シーブリーズ」

最後は、商品リリース後にポジションを変えることで、売上を何倍も伸ばした有名な事例を紹介する。それは資生堂の「シーブリーズ」という制汗剤商品だ。

もともとシーブリーズは20代〜30代の、海に行く男性をターゲットとして売られていた。しかしレジャーで海に行く人が減少し、それに伴って売上は低迷した。売上の落ち込みは長くつづき、商品を打ち切ることも検討されたという。だが、結局、シーブリーズはポジショニングを変えることで大きく生まれ変わった。

「海」といった非日常的なシーンで使われることが想定されているところから大きく舵を切り、シーブリーズは「日常」で使うものとして再定義し直したのである。

もちろんSTP分析、そしてその後のマーケティング施策はすべて一貫している必要がある。だからターゲティングも「10代の女子高生」に変更し(というか、一からブランドし直すために、STPを同時に見直したものと考えられる)、広告内容もターゲットに向け大幅にリニューアルされた。その結果、シーブリーズブランドは見事に復活して、売上は低迷期の8倍にまで伸ばすことができたのである。

……と、こう書くと「すばらしい成功事例」のように思える(そして実際、一定程度その通りだと思う)。しかし基本的にはポジショニングとは商品開発前に行うことだというのは覚えておきたい。ポジショニングを頻繁に行うのは、マーケティング戦略の一貫性を損ない、顧客が抱く商品イメージも混乱が生じかねない。

売上低迷期の「ださい」「古臭い」「時代遅れ」といったネガティブなイメージを持たれていたシーブリーズの商標をそのままにポジションの変更をするのと(実際に資生堂が採用したのはこちらだった)、シーブリーズの名をあっさりと捨てて、新ブランドとして「女子高生の日常」で使われる制汗剤を売るのとではどちらが売上は伸びただろうか? もしくは広告コストが低くすんでいたのはどちらだろうか。

仮定の話だから答えはない。けれど「すでに定着しているイメージを塗り替える」よりは「まっさらな状態で、あるイメージを持たれるようにする」ほうが容易のように筆者には思える。

いずれにせよ、製品開発の前に、十分な戦略を立ててマーケティング戦略に首尾一貫性をもたせることの重要性は繰り返し指摘しておきたい。

この記事のまとめと次のステップ

この記事ではポジショニング戦略について解説してきた。適切なポジショニングができるかどうかで、成功確率は大きく変わる。ぜひメンバーを巻き込みながら、マーケティング戦略立案を慎重に、そして楽しんで行ってほしい。

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