ビジネスの戦略を立てるうえで用いられる思考のフレームワークは大きく分けると「外部環境分析」と「内部環境分析」に分けられます。
外部環境とは、法律、文化、技術など、自社では直接どうすることもできない「外的な制約条件」のことを指します。外部環境分析の例としては「PEST分析」と呼ばれる手法があります(PEST分析についての詳細は「PEST分析はこれだけでOK!実例を交えて分かりやすく解説」を参照ください)。
対して、自社の環境・状態の分析に思考の分析ツールを「内部環境分析」とまとめることができます。
この記事では内部環境分析で有名なVRIO分析について解説していきます。VRIO分析を行うことで、自社がどれだけ競争優位性を持っているのか判断することができるようになります。
VRIO分析の具体例も紹介しながら解説するので、この記事を読めばどのようにVRIO分析を進めればいいかきっと理解でき、自分でもスムーズに分析できるようになっているはずです。
ぜひ参考にしてください。
1分でわかる!VRIO分析の概要と目的
まずは、VRIO分析がどのようなものか全体像を示しておきましょう。
VRIO分析とは、オハイオ州立大学経営学部のジェイ・B・バーニー氏が提唱した理論のことで、自社の経営資源に注目することで、どれだけ自社に競争優位性があるかを測ろうとするものです。
経営資源の内容としては、文字通り「V」「R」「I」「O」の4つに分かれます。
- V:Value(経済価値)
- R:Rarity(希少性)
- I:imitability(模倣可能性)
- O:Organization(組織)
簡単にいえば、
- 自社が「経済価値」を有しており
- さらに他社にはない希少性も持ち合わせており、
- 他社が自社のビジネスモデルを模倣しにくく、
- そのような自社のリソースを最大限活かせるような組織づくりができていれば、文句なく競争優位を持っている
と、判断するのがVRIO分析だといえます。
VRIO分析のおおまかな内容は以上となります。具体的にどのように分析を進めていくのか、次に見ていきましょう。
これでできる!VRIO分析の進め方とポイントを解説
VRIO分析の進め方として注意しておくべき点は、V→R→I→Oと順番に分析を進めなければならないということです。というのは、各段階をクリアしているかいないかでいまの自社の置かれている状況が変わるからです。
次の図をご覧ください。
上の図をみれば、自社にそもそも(経済)価値がなければ「競争劣位」に置かれている、価値はあるにせよ希少性に欠けていたら「競争均衡」状態にあるといえるといったことがわかるはずです。
価値、希少性、模倣可能性、組織、すべてにおいて強みを発揮することで「持続的な競争優位があり、なおかつ経営資源が最大限に活用されている」という理想的な状態を維持できているといえるのです。
重要なものから順にチェックしていくことで、自社の競争優位性を測ることができるので、分析の順序は必ず守るようにしてください。
それでは次に各々の「価値」「希少性」「模倣可能性」「組織」状態をチェックするうえで、どのような観点で見ていけばいいのか解説していきましょう。
自社の「経済価値」を分析する
自社のリソースのなかで最も重要な要素はValue、すなわち「価値」となります。そもそも価値がなければ、競争の土俵に上がることすらおぼつきません。
よくいわれる「ヒト」「モノ」「カネ」さらに「情報」が、顧客・市場に対してどれだけの利益をもたらしているかという観点から、自社がどれだけの経済価値・社会的価値を持っているのか分析していきましょう。
たとえば自動車メーカーであれば、生産技術、工場施設、技術者などさまざまな価値が考えられます。
自社の「希少性」を分析する
さまざまな経済価値を有しているにせよ、他社も同様の価値を持っていれば、差別化にはつながりません。このような場合「競争均衡」状態にあると判断することができます。
希少性が高ければ高いほど他社との差別化を行うことができるため、競争優位の状態に近づくことができます。
独自性の高い技術、オリジナリティーのあるビジネスモデルなどがこれにあてはまるでしょう。
自社の「模倣可能性」を分析する
自社が経済価値を有しており、かつ希少性を持っているにせよ、それが模倣可能なものなら、競合はすぐにそれを真似して接近してきます。
ビジネスにおいて上手くいっている会社の真似をすることは王道なので、容易には真似ができない仕組みがあるかどうかも、優位性があるかどうかのチェックには欠かせません。
模倣困難であればあるほど、他社は参入しにくく、自社の地位は安泰といえるでしょう。
VRIO分析の提唱者であるバーニーによると、模倣が困難であることは4つの観点から測ることができます。
- 歴史性
- 因果の曖昧さ
- 複雑性
- 特許などによる制約
もちろん、これ以外にも自動車製造のような莫大な投資が必要な産業においては、資産調達のハードルが高く、簡単に模倣することはできません。
自社のビジネスがどれだけの参入障壁を設けているのかを分析することで、自社の競争優位が一時的なものか、長く続くものか判断することができます。
自社「組織」を分析する
VRIO分析の最後は、自社組織の分析となります。バリューがあり、それがどれだけ希少性があり、模倣が難しいものであれ、自社のリソースを最大限に活用できる組織文化がなければなりません。
意志決定が迅速がどうか、経営資源を最大限活用できるような指示系統ができているかどうかという、なかなか気づきにくい視座からチェックしていきましょう。
まとめ
この記事ではVRIOの概要と進め方を紹介してきました。VRIO分析は自社の状況を客観的に把握するためには、うってつけの分析手法です。
ただ、VRIO分析は基本的には内部分析となるので、戦略策定のためには内部分析と外部分析を掛け合わせた3C分析、SWOT分析などを用いるのがより有効です(3C分析については「3C分析の方法を詳しく解説!通信業界を事例に分析の具体的な進め方を紹介」を参照にしてください)。
VRIO分析の基本をおさえたうえで、より生産的なマーケティング計画を進めていきましょう。
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