SWOT分析を完全解説/現状認識からTOWSマトリクス作成まで


自社の事業の健康状態を分析するためのフレームワークを数え上げると枚挙に暇がありません。一口に「マーケティング」と呼ばれることもある、事業の上流から下流までの全体像を正確に認識するために、ビジネスマンは定番のフレームワークを数多く使います。

この記事ではズバリSWOT分析の方法について解説していきます。

筆者は数多あるフレームワークのなかでも、このSWOT分析が最も総合的かつ実践的な分析手法だと考えています。SWOT分析は、他のフレームワークではなかなか出てこない「戦略と戦術」を編み出すのに最も近い方法なのです。

本文でも詳しく解説しますが、精緻なSWOT分析を行うには予め「外部環境」「内部環境」を整理しておく必要があります。やや骨が折れる分析であることは事実です。ですが、その手間に応じたすばらしい示唆が得られるのもまた事実です。

たしかにリサーチしたり、改めて情報を整理することに時間こそかかるものの、一通り分析を完了させるのはそれほど難しいことではありません。根気よく進めていけば、優先順位が高い「取り組むべきこと」が見えてくるはずです。

ぜひこの記事を参考にして、SWOT分析を行い、マーケティング戦略を立ててみてください。

SWOT分析の目的と概要

まずはSWOT分析の概要について解説します。すでにSWOT分析についておおまかには理解している方は、この項目は読み飛ばしても構いません。

SWOT分析を行うことの目的

そもそも、なぜSWOT分析を行う必要があるのでしょうか。SWOT分析を行う目的は、

  1. 自社が持っている強み、弱みを整理して、
  2. 外部環境という制約条件を分析を通すことで、
  3. 今後の有効な事業戦略、戦略策定を行う

というように、まとめられます。この一連のステップでいちばん重要なのは戦略に落とし込む「3」となります。

では具体的にどのような型(フレームワーク)を用いて、SWOT分析を進めるのか次に見ていきましょう。

【図解】SWOT分析のフレームワークと概要

まずは「SWOT分析」のなかにある「S」「W」「O」「T」がそれぞれ何を意味しているのか確認します。

  • S:Strengths(強み)
  • W:Weaknesses(弱み)
  • O:Oppotunities(機会)
  • T:Threats(脅威)

SWOT分析は、大きく「内部環境(自社分析)」と「外部環境」に分けて整理していくと述べました。SWOT分析を行う際に用いる4つの項目は「内部環境」と「外部環境」に分類することができます。

  • 内部環境……S(強さ)とW(弱み)
  • 外部環境……O(機会)とT(脅威)

簡潔にまとめると、SWOT分析はまず「自社の強み(S)と弱み(W)を洗い出す」ことで自社(内部環境)の現状を整理し、次に「いまの環境にどのような機会・チャンス(O)があり、同時にどんな脅威(T)」があるかを分析することに他なりません。

SWOT分s系のマトリクス図

このように、自社のプラス要因とマイナス要因、外部環境のプラス要因とマイナス要因を掛け合わせることで、今後行うべき施策を見出していくのがSWOT分析の肝です。

SWOT分析の概要については以上です。ただし具体的に4つの項目を整理するといっても、慣れないうちは難しいかもしれません。

そこで章を改めて、具体的な自社分析、外部環境分析の方法を解説します。手順に沿って分析を進めることで、問題なくSWOT分析ができるようになっているので、参考にしてください。

これならできる!SWOT分析の方法と手順

上でSWOT分析についての全体像を見てきました。ここからはSWOT分析を具体的にどのように進めていけばいいのか解説を進めていきます。

ここでは次の3つのステップに分けて説明をしていきたいと思います。

  1. 内部環境および外部環境の分析を行う
  2. SWOT分析のフレームワークに落とし込む
  3. TOWSマトリクスで事業戦略を立てる

【ステップ1】内部環境および外部環境の分析を行う

既に触れた通り、SWOT分析を進める最初の一歩は「内部環境と外部環境の整理・分析」です。

まずは内部環境分析の進め方から説明していきます。

内部環境分析の進め方:VRIO分析、バリューチェーン分析を活用

自分の組織のことなので、強みと弱みを出していくのは簡単だと思いがちです。しかし感覚的・定性的に強みと弱みを挙げても、実のあるディスカッションにはつながりません。競合他社と比較しながら、ファクトベースで自社の現状を明らかにしていく必要があります。

そこでおすすめなのが、内部環境分析に特化したフレームワークを用いることです。

たとえば、自社分析の基本となるVRIO分析は自社の経営資源を「価値」「稀少性」「模倣可能性」「組織」の4つに分類したうえで、どれだけ競争優位性があるのかを判断するフレームワークとなります(VRIO分析の詳細・進め方については「自社分析の基本!「VRIO分析」の進め方と注意点を徹底解説」を参照にしてください)。

VRIO分析以外にも、企業の活動を「主活動」と「支援活動」に分けたうえで、事業の上流から下流までを俯瞰したうえで、事業のどの工程に強さ・課題を持っているのかを明らかにするバリューチェーン分析も内部環境分析の強力なツールとなります(バリューチェーン分析については「バリューチェーン分析が丸わかり!事業を俯瞰して戦略を立てるコツ」を参照ください)。

このように内部環境を整理するために、どこに着目すべきか他の分析手法を用いて「あたり」をつけておくことで、スムーズに分析を進めることができます。

外部環境分析:PEST分析、ファイブフォース分析の活用

外部環境を分析するうえでも、実は内部環境と同じことがいえます。すなわち外部環境分析をする際には、外部環境に特化したフレームワークを使うことが有効だということです。

特にSWOT分析の「T」である「脅威」を明らかにするためには、ファイブフォース分析(5F分析)を行うのが最適です。ファイブフォース分析とは5つの観点からフォース(圧力・脅威)の有無を確認する手法です。つまりファイブフォース分析を行うことで、自ずとThreats(脅威)は明らかになるのです。

またファイブフォース分析は主に「業界分析」ですが、さらに視野の広いマクロ環境を分析することも可能です。たとえば、PEST分析では「政治」「経済」「社会」「技術・テクノロジー」といった4つの大局的な変化を捉えることで、より細かくチャンス・機会と脅威を拾うことができます(PEST分析については「PEST分析はこれだけでOK!実例を交えて分かりやすく解説」を参照ください)。

また市場分析から競合他社、さらには自社の分析を行う極めて実践的な3C分析もミクロ環境分析として有名です。

ここまで見てきたように、さまざまなフレームワークを使うことで内部環境分析と外部環境分析を進めることができます。SWOT分析が「総合的なフレームワーク」だといえるのは、これら多くの分析手法を駆使し、まとめ、そうしてようやくできあがる集大成的なフレームワークだからなのです。

内部環境と外部環境のそれぞれのプラス要因、マイナス要因を整理できたところで、SWOT分析のステップ1は完了です。

【ステップ2】SWOT分析のフレームワークに落とし込む

ステップ2では、次にステップ1で出した自社と外部環境の「強み」「弱み」をSWOT分析のフレームワークに落とし込む作業を行います。

SWOT分s系のマトリクス図

ステップ1での分析をしっかりと行えば行うほどS/W/O/T、それぞれの項目に書き込む候補が多くなります。ですが、フレームワークに落とし込むときに注意したいのは、考えられる強みと弱みを網羅的にまとめることではありません。むしろ何を残すかがポイントとなるのです。

フレームワークに落とし込むコツは、組織目標とリンクさせる

基本的に、SWOT分析は組織の目標が明確であるときに用いられる分析です。

その目的が達成可能なのか、どのような戦略を立てることで目標が達成されるのかを明らかにするのがSWOT分析の役割です。そのため、組織の目標に直接関係するS/W/O/Tを定めることが有効です。

たとえばある食品加工会社が「今期中に新商品を5つ開発し、販売する」という目標を持っている場合「商品開発部の技術力が高く、製造部との連携も強い」ことを自社の強みとして挙げるのは適切です。しかし「自社にはブランド力がある」という強みは「新商品の開発」という目標とは紐づかないので、自社の強みとして挙げるのは不適切だといえます。

関係者を集めてSWOT分析を行うことで、共通認識が得られる

SWOT分析のフレームワークに落とし込んでいく段階でおすすめしたいのが、一度関係者を取り集めることです。

一人で分析を進めていると、できるだけ客観的に見ようと思っていたとしても盲点が出てきます。さまざまな人の意見を聞くことで偏りを減らすことができ、分析の精度を上げることができます。

さらにSWOT分析は現状認識を通して次の戦略策定までを導くので、関係者が一堂に会することで合意形成が得られやすくなります。合意形成が重視される組織風土であればなおのこと、SWOT分析の結果を後から共有するのではなく、分析の段階から積極的に巻き込むことを検討したほうがよいでしょう。

S/W/O/Tの項目を書き込んだら、いよいよ今後のアクションプランの策定に入ります。

【ステップ3】TOWSマトリクスで事業戦略を立てる

S/W/O/Tそれぞれの項目を書き込むだけでは「分析をしただけ」で終わってしまいます。今後のアクションを決めるためには「TOWSマトリクス」(「クロスSWOT分析」と呼ぶこともあります)を活用しましょう。

これは外部環境を把握したうえで、そこに組織が利用できる内部環境を掛け合わせて、戦略を作ることができるマトリクスです。以下の図を見てください。

TOWSマトリクスの図

上のTOWSマトリクスの図を見ればわかるように、S/W/O/Tの項目を掛け合わせることで、具体的な戦術を出していきます。

  • 機会(O)×強み(S)……自社の強みを活用して、機会を積極的に拡大・最大化するアクションがないか検討します。ここは最も注力して検討したい部分となります。
  • 脅威(T)×強み(S)……自社の強みを活かすことで、脅威を軽減させる、もしくはなくすことを検討します。脅威を機会に転化することはできないかも含めて検討してみましょう。
  • 機会(O)×弱み(W)……「弱みを克服することで機会を活用することはできないか」、逆に「機会を活用して弱みを克服できないか」考えてみましょう。
  • 脅威(T)×弱み(W)……弱みを最小限におさえることで、どのように脅威に耐えることができるか戦略に落とし込みます。この部分が組織のいちばんのネックになっている箇所であり、リスクを抱えていると考えられるため、必ず施策にまで結びつけることを意識します。

SWOT分析からはじめ、さらにTOWS分析まで行うことで、現状認識から戦略視点の拡大、さらにはチームメンバーとの合意形成ができているはずです。

まとめ

SWOT分析の概要から、実際の進め方・注意点を解説してきました。要点だけをまとめると、次の通りです。

  • SWOT分析は最も総合的で実践的なフレームワーク。分析だけで終わらせずに、必ずアクションプランまでもっていくこと
  • SWOT分析に欠かせない内部環境分析、外部環境分析はそれぞれに特化したフレームワークを利用するとスムーズ
  • TOWSマトリクスを活用することで、戦略の幅が広がる
  • SWOT分析を関係者が揃って行うことで、現状認識から戦略策定の合意形成がしやすくなり、その後の施策もメンバーが納得感をもって推進することができる

SWOT分析を進めるには、自社組織についてしっかりとした理解が欠かせませんし、手を動かなさいとわからないこともあるかと思います。

逆にいえば、事業理解をしたうえで一つひとつ分析を進めていけば、必ずや行うべき戦術が見つかるはずです。

この記事を参考にぜひステップに沿って、臆することなく果敢にSWOT分析にチャレンジしてください。

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