日本のチョコレート年間消費量の20%を占めるというバレンタイン。このバレンタインという行事は、いつから日本に定着するようになったのでしょうか。
もともとバレンタインデーは、実は西暦269年というずっと昔に起きた出来事に由来しています。
この記事ではバレンタインがどのように生まれ、日本でどのように広まっていったのか、そして日本型バレンタインの「異常性」について解説していきます。
バレンタインの蘊蓄がつまっているので、ぜひ周りの人たちにも教えてあげてください。
「バレンタイン」の由来を簡単に解説
それでは、さっそくバレンタインがどのように生まれたのか、簡単に見ていきましょう。
バレンタインは司祭の名前
バレンタインの「バレンタイン」は聖ウァレンティヌス(テルニのバレンタイン)に由来しています。
詳しくは後述しますが、司祭であったバレンタインがローマ皇帝のもとで迫害を受け、殉教した日、それが2月14日、バレンタインデーなのです。
バレンタインデーが「愛の誓い」の日として広がり、定着するまでの流れ
では、なぜバレンタインは処刑され、その日が「カップルの愛」を祝福する日と位置付けられるようになったのでしょうか。
実は当時のローマ帝国皇帝・クラウディウス2世は、兵士たちの婚姻を禁止していました。
その方針に真っ向から立ち向かったのがキリスト教の司祭だった聖バレンタイン。バレンタインは兵士たちのために内密で結婚式を執り行っていたのです。しかし秘密はいつかはバレるもの。バレンタインが密かに結婚式を行っていることが、ローマ皇帝の耳に入ってしまいます。
当然、ローマ皇帝は激怒して、結婚式を行うことを止めるようバレンタインに命じます。その命令をバレンタインは無視して、引き続き兵士たちの結婚の手助けを行います。これが理由で、ローマ皇帝はバレンタインを「家庭と結婚の神」であるユーノーの祝日の日、2月14日に処刑したのです。
ローマ皇帝の迫害に屈せず、結婚の儀式を一貫して守り抜いたことから、バレンタインデーは「愛の誓いの日」として西方教会で祝われ、やがて世界中に広がっていくことになるのです。
「日本型バレンタインデー」の由来と特徴
バレンタインデーが世界中に広がったといっても、地域によって定着の度合いは異なります。日本ではどのようにバレンタインデーが広がっていったのか、解説していきます。
また、日本のバレンタインデーは他地域とは異なり、かなり奇妙な特徴があります。そちらもあわせて紹介します。
日本でバレンタインデーが広まったのはマーケティング戦略
日本でバレンタインデーが広がったのは、企業の商業戦略によるものです。
バレンタインデーの商業利用は洋菓子メーカ・モロゾフが1936年に英字新聞に出した広告のコピー「あなたのバレンタイン(=愛しい方)にチョコレートを贈りましょう」が最初です。
ただし、このモロゾフの広告だけでバレンタインデーが定着したわけではありません。その後も伊勢丹、森永製菓、ソニープラザなどが「バレンタインデーにはチョコレートを贈ろう」というメッセージを込めた広告を展開して、ようやく1970年代に一つのイベントとして認知されるようになったのです。
この記事の冒頭でも触れましたが、いまではチョコレートの年間消費量の2割は、バレンタインが占めるまでに広がっています。
ただ、バレンタインデーをマーケティング戦略として利用するにしても、なぜチョコレートだったのか理由は明確ではありません。ご存じかもしれませんが、バレンタインデーにチョコレートを贈る習慣は、日本独自のものなのです。
それ以外にも「日本型バレンタイン」は世界水準からすると奇妙なところがいっぱい。そこで、次に日本のバレンタインデーのおかしな点を紹介していきます。
日本型バレンタインデーの特徴
日本のバレンタインの目立つ点、特徴は次の3点です。
- 女性から男性へ送るという一方通行性
- 贈答品のほとんどがチョコレート
- 宗教的色彩が薄く、イベント化されている
それぞれ詳しく見ていきましょう。
女性から男性へと一方通行的に送られる
「フラワーバレンタイン」など、花小売店の商業戦略としてバレンタインを「男性から女性に花を贈る日」として位置付けようとする動きはあります。
しかしまだ圧倒的に「女性が男性に贈る日」と認識されているのが現状です。
西ヨーロッパ、アメリカでは、男女問わずさまざまな贈り物を渡す習慣があります。逆に日本でいうところの「ホワイトデー」にあたる日はありません。
そもそも「愛の誓い」の日であるバレンタインデーなのですから「女性のみが贈る」のは奇妙な話ですね。
贈答品のほとんどがチョコレート
日本では「バレンタインデー=チョコレート」という図式があります。しかしこれも日本ならではの特殊事情。
19世紀にイギリスの製菓会社がバレンタインデーにチョコレートボックスを発売し、その風習が残っている地域はありますが、これだけチョコレートばかりがバレンタインの贈答品に選ばれる国は他にありません。
日本以外の国では、ケーキ、花、メッセージカードなどチョコレート以外のプレゼントが選ばれることがふつうです(なお、男性に贈るチョコレート以外のおすすめプレゼントについては「チョコ以外で贈りたい!バレンタインで彼が本当に喜ぶプレゼント10選」を参照してください)。
宗教的色彩が薄く、イベント化されている
海外の宗教的行事が日本に輸入される際には「イベント化」するのが常です。ハロウィン、クリスマスなどを見れば一目瞭然でしょう(なお、日本でハロウィンがどのように広まっていったかについては「ハロウィンはいつから日本で流行ったのか?その経緯と理由をズバッと解説」を参照してください)。
またこのイベントがプライベートだけではなく、半ば義務化しているところも特徴です。いまでも保守的な会社では、女性社員から男性社員へのチョコレートの贈答を「義理」として実質的に強制されているところもあります。
この会社での義理チョコはセクハラの一種ではないかという声もあがっています。
以上が、日本型バレンタインデーの目立った特徴です。しかし、このような日本の特殊なバレンタイン事情は緩やかに解体していくのではないかと思われます。
最後に、日本のバレンタインデーがどのように変わっていくかを予想して、記事をしめくくりたいと思います。
日本型バレンタインデーの行方
日本のバレンタインデーは少しずつ形を変えています。ここでは、どのように日本のバレンタインが変わっていくか見ていきましょう。
- バレンタインは贈答品も贈る人も多様化する
- よりプライベートなイベントになっていく
上の2点で、大きな変化が見られると考えています。どのようなことか記述します。
バレンタインデーの多様化
これまで「女性」が「チョコレート」を男性に贈る機会だとされてきましたが、今後はより自由に贈りあうようになるのではないかと思われます。
バレンタインデーの前後にはデパートにたくさんの種類のチョコレートが並びます。チョコレートが好きな人にとっては、せっかくなら楽しみたいもの。また人との友好関係を深める良い機会にもなるでしょう。
実際、自分で食べるためにバレンタインの季節にチョコレートを購入する方、また女性同士でチョコを贈りあういわゆる「友チョコ」も一般的になりつつあります。
また贈答品は「チョコレートでなければならない」理由は一つもありません。今後はチョコレート以外のもの、贈り相手により合わせて品を選ぶようになってくのではないでしょうか。
バレンタインはよりプライベートなイベントになっていく
上のような、それぞれの関係に合わせたバレンタインを過ごすようになることに伴い、バレンタインデーはよりプライベートな行事になっていくと予想します。
友人、恋人、夫婦、それぞれの関係に応じて楽しめるバレンタインデーを作っていくことになるでしょう。
そして、よりプライベートなイベントになっていくにつれ、パブリック(公)のイベントからは離れていくようになるはずです。
会社の同僚、上司への「義理チョコ」の慣習は減っていき、いずれ消滅するでしょう。
まとめ
この記事ではバレンタインの由来を解説するとともに、日本での広がり方、日本型バレンタインの特殊性について見てきました。
バレンタインは愛を誓う楽しいイベントです。バレンタインがこれからどのように変わっていくのかとても楽しみですね。
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