目標管理制度は多くの会社で採用されている。典型的な目標管理制度は次のようなものだろう。半年なら半年の目標を、部下は上司と相談しつつ決め、目標を設定する。期末がやってきたら、その目標が達成できたかどうか、達成率は何%なのかを振り返り、その達成率をもとに人事考課を行う……
このような制度は、私自身の経験を省みても、周りの声を聞いても、上手く機能していることはほとんどない。むしろ不満の声だらけである。
不満の声としてよくあがるのが、目標を設定するのは(「面談」「相談」といった形を取っているにせよ)、実質的には会社、あるいは上司であることがままあるという点である。要するに目標管理というより「ノルマ管理」になってしまっている例が多い。
会社なり、上司なりの意向があり、それを直接的に給与・待遇に反映させるのであれば「目標設定」など実は必要ない。上から「ノルマはこれだ!」と最初から提示すればいいだけの話である。そして、インセンティブなり何なりを成果に応じて与えればすむ話である。
しかし、それだけだと責任感を持たせることができないと考え、部下の「自主的な」目標設定を望み、「面談」「相談」という形を借りて、これは二人で決めたこと、部下も納得して決めたことなのだから(実は納得していない場合がほとんどなのだが)、責任を持って仕事に当たるはずだと見なす。
しかし、部下としては、一方的に「目標」(ノルマ)を与えられていると感じているので、モチベーションが上がることはまずない。それは会社の目標であって、部下の目標ではないから当然だ。そのうち、「目標」という言葉に対しても嫌悪感を感じるようになるかもしれない……
さて、あなたの会社がそのような目標管理制度を採用しているのであれば、それはとても残念なことだが(そしてあなたが「上司」という役割をこなしているのであれば、即刻改めるべきだが)、適切な目標を立てること、そしてその目標を叶えるためのルートマップを敷き、行動に移すことは、自分を成長させるための大きな武器になる。そもそも、成長すること、これまでできなかったことができるようになることというのは、とても楽しく、おもしろいことだ。
それを実現しやすくするためのツールとして、目標管理がある。
あなたの会社や上司が、意味のない、あなたにとっては魅力を感じない目標を与えるのであれば、それは仕方ない。しかし、そのことは、あなたが自分自身の目標を立て、その達成への道を進むことを退けるものではない。自分自身で目標をつくり、その道を歩くということは、自分で自分の目標を、成長を、人生を管理するということだ(本当の「目標管理」というのは、その手助けを上司が部下に行うことなのだが、ここでは措こう)。
といっても、適切な目標を立てることは技術である。適切な目標を打ち立て、自分で動かしていくというのは、容易なことではない。目標設定をするときに、是非参考にしてもらいたいのが、谷口貴彦氏の『ザ・コーチ』である。
- 作者:谷口 貴彦
- 出版社:プレジデント社
- 発売日: 2009-12-10
本書を読めば「目標を立てる」ということがどういうことなのかよく理解でき、また、それをどう達成させるように行動すればいいのか、その方針が立てられるようになる。
「目的」「目標」「ゴール」「夢」「ビジョン」の相互連関を知り、自分がコミットできる「目的」を「目標」へと細分化するといった基本的な目的への道程を描くこともできるようになるだろう。またそれを日々の行動へと落とし込むコツも掴めるはずだ。
重要なのは目的を単に掲げることには何の意味もないということだ。大きな野望を抱くことは結構だが、それがあまりに遠く、ロードマップを描くことすら難しいのであれば、行動へと変換するのはほとんど不可能だ。そしてそのことに焦り、無力感に苛まれるのはより事態を悪化させる。
自分がこうなりたいというビジョンを持ちつつ、そうするためには何を目印にすればいいのか、近い目標、小さい目標に置き換え、「行動できる状態にどうすればもっていくことができるか」を中心に考えたほうがいい(そのための方法も本書では触れている)。
方向を間違えずに、目的に向かって弛むことなく歩いていけば、仮に目的に到達できなかったとしても、少なくともあなたはそこに近づいたのだ。そして、その過程で得るものは、当初掲げていた目的よりも大きいこともある。
(※「成果目標」に捉われすぎるのは、認知に狂いを生じさせるという意味でも望ましくない。成果をあげられるときは、タイミングやライバルの不調といった偶然性に左右されることも多い。成果があげられないときもまた、偶然性がかなりの程度影響している。自分にコントロールできない外部的要因に左右される成果をあまり過大視するのはやめたほうがいい。そうではなく、自分にコントロールできる「行動目標」を重心的に振り返るほうが、再現性も高く、継続的な価値をもつ)。
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